平成23年1月
宅和勝弘 株式会社ジェイテクト 営業本部営業統括部輸出・通商室通商グループ長の講演の概要は以下の通り。
当社は主に自動車部品を生産しており、軸受、ステアリングシステム、駆動部品、工作機械の4事業を展開している。本日ご紹介するのは軸受の輸出におけるEPAの活用例。
当社では現在タイとインドネシアとのEPAを利用している。EPAの活用を始めたのは2008年の夏頃から。タイを選んだのは、アジアにおいて中国に次いで投資が集積しており、輸出金額が大きいため。一方、インドネシアは、関税削減幅(5%から0%になる)が大きいため。
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次にどの商品について利用するかを検討した。外務省のホームページやJETROのWEBサイトを用いて調べたところ、一番関税率の高い自動車部品についてはEPAによっても30%の税率は下がらないことがわかったが、軸受及び軸受の部品については、タイでは1%、インドネシアでは5%もの関税が削減できるものがあることがわかった。この調査の際、一番のハードルは取り扱っている製品・商品が輸入側にていかなるHSコードで通関されているかを調べること。正確な情報を事前に入手されることをお勧めする。
次のハードルは「日本製」の定義。これは協定毎・商品毎に原産地規則として、外務省のHPにある協定文に記されているが、日本語が難しく、わかりにくい。勉強してみたところ、当社の製品はCTSH(HSコード6桁変更基準)を用いれば、日本製であるとの立証が容易であることがわかった。
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弊社では品番で数えると1,000点以上の製品をタイ向けに輸出しているが、全品番についてEPAの適用を行おうとすると膨大な作業が生じてしまうので、これらを出荷額が大きい順にならべ、その上位から徐々にEPAの利用を増やしていった。
注意すべきは手数料。納期がタイトで航空便による少量出荷をする時等、小規模出荷の際には、関税削減分より手数料の方がかかってしまう場合も生じうる。
EPAの利用を開始するには、順調にいくと見積もって営業日ベースで21日、約1ヶ月くらいで活用を開始できる。
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EPAを活用する中でいくつかトラブルも生じた。日タイEPAではタイの税関で特定原産地証明の遡及適用を行って頂けるが、インドネシアの場合は現地の関税法に関税を還付する規定がないため、急いで航空便で出荷する際などには特定原産地証明書の発給・発送が間に合わず、利用できない。また、コンテナ出荷の際、EPA対象商品と非対象商品が混在してしまう場合がほとんどだが、タイの場合は同梱を許容してもらえている一方、インドネシアでは認めてもらえず、余計な手間がかかっている。
タイ向けでは、2008年夏に約1,000点中5点でスタートし、昨年までに約90点程まで利用品数を拡大、金額ベースでは7割近くをカバーするまでになり、それなりの効果を得られている。一方、インドネシア向けでは、そもそも輸出品数が40点程に止まっているが、徐々にEPAの利用対象を増やしてきており、現在金額ベースで6割近くを占めるところまできており、未利用の10点について別インボイス・別梱包にする手間の方がかかるようになってきている。
EPA利用事務については既存の体制の中で業務を数人に割り振り、通常業務の範囲内で吸収させている。CTSH基準が適用できない製品についても、勉強して利用を拡大していくことが今後の課題である。
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